広告費からみるクックパッドの3つの方向性
昨今、テレビへの広告出稿からインターネットへの広告出稿料が増えており、
インターネット広告市場が1兆円を超えた。
スマートフォンの浸透率が国内では人口の5割を超え、マス媒体よりも
個々人にパーソナライズした広告をいかに展開していくかと各社、
様々なチャレンジをしている。
今回は、クラシルやデリーといったスタートアップが王者クックパッドが
君臨する料理レシピ業界の今後を「広告費」という切り口から
分析してみたい。
通常、売上に対する広告費というのは各業界・業種によって変わってくる。
例えば、
・外食業界:5%
・自動車業界:1〜3%
・金融業界:1〜5%
・小売流通業界:2〜5%
・食品・飲料業界:5〜7%
などの割合が多い。
それでは、クックパッドの広告費はどのくらいなのだろうか。
また、クックパッドに類似したビジネスモデルと比較した際の
広告費率とともに分析してみたい。
・フリーミアム+広告モデル
・特定の業界でトップサービス
上記に照らし合わせた際にピックアップした企業として、
「アイスタイル(@コスメ)」、「ぐるなび」、「弁護士ドットコム」の3社とする。
尚、広告宣伝費という項目に加えて、販促費も加えた数字とする。
■クックパッド(2016年12月期決算より)
売上対比の広告費:「0.2%」
・会員数:190万人
・MAU:6,327万人
・売上:168億4,500万円
・広告費:2億7,400万円
■アイスタイル(2016年3月期決算より)
売上対比の広告費:「11%」
・会員数:370万人
・MAU:1,380万人
・売上:142億円
・広告費:15億4,900万円
■ぐるなび(2016年3月期決算より)
売上対比の広告費:「6.8%」
・会員数:1,397万人
・MAU:5,700万人
・売上:346億1,700万円
・広告費:23億6,300万円
■弁護士ドットコム
売上対比の広告費:「15%」
・会員数:7万人
・MAU:800万人
・売上:11億円
・広告費:1億7,200万円
上記より、売上に対する広告費が圧倒的に低いクックパッド社。
クックパッド社に関しては、内紛もあったこともあり、当期はスポット広告を
やめたが、それでも前期の半分の数字である。
仮にスポット広告を展開していたとしても、1%に満たない可能性がある。
今回の広告費から、今後の業界を占ってみたいと思う。
クックパッド社は上記3社の業界と違い、今まで全く競合がおらず、
広告費を投下せずとも、ブルーオーシャンとして、料理レシピ業界を牽引してきた。
アイスタイルには「楽天」などの総合プラットフォームや自社ECを行なっている
各企業群が存在していた。
尚、弁護士ドットコムは今後、クックパッドのようなブルーオーシャンの領域となる
可能性を秘めている。
しかし、昨今、「料理・レシピ動画」を展開する「Kurashiru」や「dely」などが
このクックパッドの業界に入ってきた。
クックパッドにとっては、久しぶりの競合であり、且つ、今後、脅威となる。
今後、クックパッドとして3つの方向性が考えられる。
1.ここから2〜3年以内で国内広告費比率を増やし、スマホのアプリユーザーを増やす。
スマートフォンやPCのブラウザでは月額280円、アプリでは月額400円という
会員モデルである。
例えば、グノシーはかつて、合計で15億円もの広告費を使い、約半年間で320万
アプリダウンロードを達成。
パワープレーでアプリダウンロード数を増やし、
・既存の会員数の単価向上(ブラウザユーザー→アプリに転換)
・新規会員獲得(アプリダウンロード→一部課金に転換)
といったことが想定される。
2.国内への広告費は変えず、海外向けの広告投資を強化していく
会社を買収することで、海外基盤は広げているが、その市場での圧倒的な一番とは
まだなっていないため、認知度の向上を図り、ユーザーを取り込むために
海外での広告投資を強化していく。
3.広告費は増やす必要はない。単純に新しいサービスへの投資を行っていく。
国内では圧倒的なシェアをとっているので、特段広告費は増やさなくても
順調に伸びていくだろう。
決算説明資料でも記載の通り、「コスト感覚を持った企業文化にしていく」と
記載の通り、新しいサービスへの投資を淡々と行なっていくのだろう。
広告費からみる今までのクックパッドの余裕と
今後、どこに資金を投下するのかがクックパッドの生き残りを決める。